Nodens

Detailed Explanation (may be) of Gods of CTHULHU MYTHOS

 

ノーデンス、ノデンズ、ノデンス

 

1894年 初言及作品:アーサー・マッケン「パンの大神」

1931年  登場作品:H・P・ラヴクラフト「霧の中の不思議の館/霧の高みの不思議な家」

1948年   登場作品:H・P・ラヴクラフト「幻夢郷カダスを求めて/未知なるカダスを夢に求めて」  

1957年  言及作品:ラヴクラフト&ダーレス「破風の窓」 

1973年  登場作品:フレッド・L・ペルトン「The Sussex Manuscript」 

1975年  言及作品:ゲーリー・メイヤーズ「The House of the Worm」  

1986年  言及作品:レオン・L・ガンメル「Tales of Old Zid-Yargoth」

1992年  言及作品:A・A・アツタナジオ「A Priestess of Nodens」

1999年  言及作品:ジョゼフ・S・パルヴァー「Nightmare's Disciple」

 

別名:パン(Pan)

呼称:大神(The Great God)

    深淵の王/大いなる深淵の主(Lord of the Great Abyss)

ノーデンスは通常、古き神とされ、その場合、彼等の王であるとされる事も少なくありません。その一方、大地の神であるとされる場合や、古きものの一柱であるとされる事もあります。

ノーデンスは元はアーサー・マッケン(Arthur Machen)「パンの大神」(The Great God Pan)に名前が登場する存在です。ここでは仮にパンと呼ばれた女性を孕ませる不可視の何者かが、古代ローマ時代に知られたノーデンスと呼ばれる存在である事を匂わせています。つまりパンの大神と呼ばれるものの正体が、ノーデンスの大神であるらしいと云う訳です。 

ノーデンスが名前だけではなく正式に登場したのは、ラヴクラフトのキングスポートものの一作「霧の中の不思議な館」(The Strange High House in the Mist)です。ここでは貝に乗り従者にトリトン達を引き連れる海神らしき存在として描かれていますが、「皺だらけの腕」以外、具体的な描写はありません。                                                                その次は「未知なるカダスを夢に求めて」(The Dream-Quest of Unknown Kadath)Dream-landsを舞台に、声だけの登場です。どうやらアザトース(Azathots)ナイアルラトホテプ(Nyarlathotep)と敵対しているらしい事と、恐ろしい魔物である筈のナイトゴーント(Nightgaunt)達がノーデンスには従う事がここで判明しています。(但し、今日ではナイトゴーントの一部と考えた方が良いでしょう。)いずれにせよ、ノーデンスの名前を借用しただけで、名前以外は全てラヴクラフトのオリジナルと考えて良いでしょう。なお、「未知なるカダスを夢に求めて」はラヴクラフトの没後に発見されたもので、「霧の中の不思議の館」よりも先に書かれた可能性もあります。

ノーデンスについて、最初にこの神を古き神であると印刷物に記したのは、1943年にフランシス・T・レイニー(Francis T Laney)が発表したクトゥルー神話用語集(The Cthulhu Mythology : A Glossary)のようです。単独での発表ではなくラヴクラフトの作品集に収録されたものだったようです。なお、ノーデンス古き神としたのがレイニー自身の考えなのか、それとも別な何かを読んでこう書いたのかは、よく判りません。と言うのはノーデンス古き神であると最初に考えたのが「サセックス草稿」(The Sussex Manuscript)の生みの親フレッド・L・ペルトン(Fred T Pelton)の可能性もあるからです。                            ペルトン「サセックス草稿」を、どうやら1946年には書き上げていたようです。リン・カーター(Lin Carter)「クトゥルー神話の魔道書」(H.P.Lovecraft : The Books)の中で「ペルトンはアーカム・ハウス社から刊行される希望をもって全文を書きあげ、ダーレスも一時はこの企てに興味をもったために、先述した小説のなかにとりいれ(大瀧啓裕訳)」と書いています。すなわち、この書物は作中に登場した時点で既に作品として出来上がっていたと云う変わった経緯を持つものなのです。しかしアーカム・ハウスから出る事はなく、陽の目を見たのは70年代、ペルトンは既に亡くダーレスも他界した後の事でした。しかしダーレスはこの作品を読んでいた筈です。そしてペルトンの影響かどうか判りませんが、ダーレスの神話作品でも、古き神に関する記述が途中で変化しているのです。1940年に発表された「サンドウィン館の怪」(The Sandwin Compact)では「もっとも古い存在は、善の力である旧神で、個個の名前はない(後藤敏夫訳)」とされていたのが、1957年の「破風の窓」(The Gable WINDOW)では「<大いなる種族>の一員で<旧神>中唯一名前のある大いなる深淵の主ノーデンス(大瀧啓裕訳)」となっているのです。                                                                                                                                                     「サセックス草稿」は神々と地球の知られざる歴史を語っており、聖書をかなり意識しています。聖書のエピソードの幾つかには元となる事実があった・・・と云う感じなのです。面白いのは神々の王が、まだ知性を剥奪される前のアザトースで、ノーデンスソトース(Sothoth)と云う神と共にアザトースの従者であったとされている事です。ウルター(Ulthar)ヨグ=ソトース(Yog-Sothoth)、クトゥルー(Cthulhu)と云った古きもの達を創造したソトースと主のアザトースは、他の神々より神々に味方したウルターを除く古きもの達ともども追放されノーデンスが玉座に就いたとされていますが、この設定をそのまま受け入れて作品を発表している書き手は今のところ居ないようです。けれども、ノーデンス古き神の王であると云う設定はリン・カーターに受け継がれました。

ダーレスが新たなクトゥルー神話作家達として世に送り出した、いわゆる第二世代作家のうち、ラムジイ・キャンベル(Ramsey Campbell)は都合が良ければ古き神に依る封印を持ち出す程度で古き神そのものについては言及せず、コリン・ウィルスン(Colin Wilson)に至っては古き神どころか他の書き手達の様な形での古きものすら登場させませんでした。ブライアン・ラムレイ(Brian Lumley)は古き神を単なる異星人の集団とし、代表(スポークスマン)をクトゥルーと同族の科学者であるクタニド(Kthanid)としてノーデンスの事は無視しました。                                                第二世代作家のうち、ノーデンスを扱ったのはリン・カーターゲーリー・メイヤーズ(Gary Myers)だけでした。ノーデンスの扱いで、この二人には面白い共通性があります。二人共、一度はノーデンス大地の神としたのです。もっとも、カーターの場合、まだクトゥルー神話作家としてデヴューする以前の事です。50年代にまだアマチュアの立場で書いた「クトゥルー神話の神神」(H.P.Lovecraft : The Gods)ノーデンスの項で彼は「レイニーはノーデンスを旧神のひとりとしているが、わたしにはレイニーの主張を裏づける証拠がなにひとつ見いだせない。旧支配者の一員でないことだけは確かであって(大瀧啓裕訳)」として、大地の神にしてしまっています。そもそも古きものでないことが確かである・・・証拠も無いと想うのですが、いずれにせよ、クトゥルー神話作家となった後、カーターノーデンス古き神の王であるとし、古きもの達の祖であるアザトースウボ=サスラ(Ubbo-Sathla)古き神達に依って創造されたものであるとしました。                                                                  一方のメイヤーズラヴクラフトDream-landsを舞台にした「The House of the Worm」確信犯的ノーデンス大地の神としました。これは1970年に彼が発表した同タイトルのデヴュー作を元にした連作集で、古きもの達が眠っている隙にベテルギゥス太陽系から飛来した脆弱な神々が古きもの達が眠り続けるよう封印を施し、そのままDream-landsに棲み続け、その封印が弱まらないよう監視するのがノーデンスだったと云うのです。つまり、古き神々の正体は人間の魔術師よりも弱いとされた大地の神々だったと云うものです。なお、メイヤーズのデヴュー作は「妖蛆の館」のタイトルで日本語訳がありますが、連作集の方と比較すると設定そのものが異なっています。彼は「The House of the Worm」の序文でラヴクラフトノーデンスは出していても古き神は出していない、あれはダーレスのでっちあげだ、と云った主旨の事をぼやいています。古き神=脆弱な大地の神と云う発想もそんな不満からなのでしょうが、想うにデヴュー時には、まだそこまで考えついていなかったのでしょう。

ダーレスに依って見出された作家達は、第二世代作家達だけではありませんでした。ダーレスが続けて世に送り出す筈だった、云わば第三世代作家となる書き手達が居たのです。ジョン・S・グラスビー(John S Glasby)、ウォルター・C・デビルJr.(Walter C DeBill Jr.)、エディ・バーティン(Eddy Bertin) 、ジェイムズ・ウェイド(James Wade)、アルバート・A・アツタナジオ(Albert A Attansio)と云った書き手達で、彼等はダーレスの急逝に依りアーカム・ハウスからデヴューする道を絶たれてしまい、同人誌を舞台に次々と作品を発表して行きました。そんなクトゥルー神話のLost Generationとも呼ばれる書き手の一人アツタナジオが後に書いた「A Priestess of Nodens」を見ると彼はノーデンス古きものであるとしています。

音楽雑誌でレヴュアーとして活動しているジョゼフ・S・パルヴァー(Joseph S Pulver)が1999年に発表した長編「Nightmare's Disciple」では、彼は誰が古き神のトップである・・・と言うコメントはせずにクタニドを登場させると共にノーデンスについても言及しており、ノーデンスと女神のゼヒリート(Zehirete)の間には長男のオスカルソ(Othkkartho)が居るとされています。

 

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