Nyarlathotep

 Detailed Explanation (may be) of Gods of CTHULHU MYTHOS

 

ナイアルラトホテップ、ナイアルラトホテプ、ナイアルラソーテップ

ナイアラートーテップ、ナイアラーソーテップ

ニャルラトホテップ、ニャルラトホテプ、

ニャルラソーテップ、ニャルラトテップ

 

1920年 初言及作品:H・P・ラヴクラフト「ナイアルラトホテップ/ナイアーラソテップ」

1933年  登場作品:H・P・ラヴクラフト「魔女の家で見た夢/魔女屋敷で見た夢/魔女の家の夢」

1936年  登場作品:H・P・ラヴクラフト「闇に這う者/闇の跳梁者/闇をさまようもの」 

1936年  言及作品:H・P・ラヴクラフト「闇にささやく者/

              ロバート・ブロック「顔のない神/無貌の神」

              ロバート・ブロック「闇の魔神」

1937年  言及作品:ロバート・ブロック「暗黒のファラオの神殿」

1944年  登場作品:オーガスト・ダーレス「闇に棲みつくもの」 

1948年   登場作品:H・P・ラヴクラフト「幻夢郷カダスを求めて/未知なるカダスを夢に求めて」 

1976年  登場作品:ジェームズ・ウエイド「The Silence of Erika Zann」

1976年  言及作品:リン・カーター「Zoth-Ommog」

1978年  言及作品:コリン・ウィルスン他「Necronomicon」 

1978年  登場作品:エドワード・ポール・バーグランド「Sword of the Seven Suns」

1979年  言及作品:ランドール・ラースン「The Gunfight Against Nyarlathotep」

1979年  登場作品:ロバート・ブロック「アーカム計画」

1980年  登場作品:A・A・アツタナジオ「不知火」

1980年  登場作品:ディヴィッド・ドレイク「蠢く密林」

1992年    言及作品:ジョン・ブラナー「Concerning the Forthcoming Inexpensive Paperback Translation of the Necronomicon of Abdul Alhazred」

2001年  登場作品:グレゴリイ・ニコル「How Nyarlathotep Rocked Our World」

2003年   関連作品:ベンジャミン・アダムス「リッキー・ペレスの最後の誘惑」

2004年  言及作品:ドナルド・タイスン「Necronomicon」

2008年  登場作品:リンダ・L・ドナヒュー「Noir-Lathotep」 

 

別名:アフトゥ(Ahtu) 

呼称:這いよる混沌(The Crawling Chaos)

          大いなる使者 (The Great Messenger)

    古きものの使者(Messenger of Old Ones)

    カーネターの黒き使者(Black Messenger of Karneter)

          顔無き者(The Faceless One)

           闇に吠えるもの (Howler in the Night)     

化身:闇に這うもの(Haunter of the Dark)

         闇に棲むもの(Dweller in Darkness)     

この神は古きもので、時にはその中でも外なる神に分類される事がありますが、外なる神と云うのは元々はテーブルトークRPGを進める上での分類で、ゲーム以外での意味は無いものなので、あまり気にせず、どちらの分類でも好きな方で考えて良いでしょう。

 

エジプト風の名前が示す通り古代エジプトで崇拝されていました。「顔の無いスフィンクス」や「顔の無い神」の像は、ナイアルラトホテップの事である(化身の一種)と言われています。      現代のアメリカでは、化身の一人が束ねる「星の智慧」教団などが存在しこの神の信仰を続けています。                                                                                 コリン・ウィルスン(Colin Wilson)ネクロノミコン(Necronomicon)では主要な神々は惑星に対応しているとされナイアルラトホテップは水星に対応しているとされています。

 

この神についてですが、ラヴクラフトが同人誌The United Amateurの1920年11月号に発表した「ナイアルラトホテップ」(Nyarlathotep)の中で、唯の詐欺師と想いきや世界を破滅させる存在であった・・・・・・と云う、まだラヴクラフト自身が一連の宇宙的恐怖(Cosmic Horror)作品を発表する以前でありながら、初登場(?)で既に今日のナイアルラトホテップを髣髴させる姿を見せています。この時は人間の姿なのですが、後にラヴクラフトが発表した「魔女の家で見た夢」(The Dreams in the Witch House)「闇に這う者」(The Haunter of the Dark)では不定形の混沌とした暗黒の様な姿を見せています・・・・・・スライム風ではなくて、形を変え続ける暗黒空間の塊が蠢いている・・・・・・と云う感じでしょうか。そこに見られるのは本能のままに突き進む異形の存在、この世の法則を超越した何かの姿であり、まさに「這いよる混沌」の呼び名にふさわしい姿です。その一方、「ナイアルラトホテップ」の時はまだこの神について見られる後々の構想は無かったとしても、明らかに人間の姿体ですし、或いはそこから発展させたものかも知れません。ラヴクラフトの没後発見された「未知なるカダスを夢に求めて」(Dream-Quest of Unknown Kadath)では、異なる神(Other God)達を引き連れ、大地の神(God of Earth)達の保護者を自認する知的で堂々とした姿をランドルフ・カーター(Randolf Carter)の前に見せています。又、ラヴクラフト「闇に這う者」で「星の智慧」と云うナイアルラトホテップを崇める教団を出す一方、正に「這いよる混沌」状態のナイアルラトホテップを召喚するアイテム(知性の無い破壊兵器を呼び出すにも等しく、その意味では実質的に最終兵器も同様)である輝くトラペゾヘドロン(The Shining Trapezohedron)を登場させました。後にナイアルラトホテップはいまだ地球に実体を顕した事がなく、出現するナイアルラトホテップは全て彼の化身であると云う考え方になりますが、このアイテムに依り召喚されるナイアルラトホテップは、今日、”闇に這う者”として知られる化身です。輝くトラペゾヘドロンは非常に危険なアイテムで、普段は箱に入れられています。そうしないと”闇に這う者”が召喚されてしまうからなのですが、何故か元は南極に居た海百合状の先住異星人達が持っていたものとされています。何の為に持っていたのか・・・・・・クトゥルーの落とし仔ミ=ゴに対する切り札の積もりだったのでしょうか?いずれにせよ制御不能のアイテムと云ってよく、リンダ・ドナヒュー(Linda L Donahue)「Noir-Lathotep」では、ナイアルラトホテップの人間体の化身の一人を殺害した犯人を探す人間体の筆頭化身が、誤って箱が開かれた為、イス人の精神に憑かれた女探偵と共に”闇に這う者”に襲われ必死に逃亡すると云う、見方に依っては間抜けな状況が展開します。

 

 

この神の存在に更に深みを与えたのはロバート・ブロック(Robert Block)オーガスト・ダーレス(August Derleth)です。幼少の頃からエジプトに興味があり、やがてウイアード・テイルズを読んでラヴクラフトに出会いファンレターを出した事がきっかけで交流を開始したブロックが、ナイアルラトホテップに言及するようになったのは当然の結果だったと云えるでしょう。ブロックはおのれの創造したセベク(Sebek)、ビャティス(Byatis)、ビャグーナ(Byagoona)、ハン(Han)よりもナイアルラトホテップの方に重点を置きました。前述の四神については、元々エジプトで実際に崇め奉られていたセベク以外は名前だけで、登場する事はおろか姿形や性質すら明らかにされていないにも関わらずラヴクラフトの創造したナイアルラトホテップだけは、古代エジプトの一部で知られていた神として懸命に描き続けました。晩年になって彼が発表した長編「アーカム計画」(Strange Eon)でもクトゥルー(Cthulhu)復活の話ではあっても重要な役どころで登場し、クトゥルー神話作家としてブロックを見た時、ナイアルラトホテップを描き続けた作家と評して良いでしょう。もう一人のダーレスは少し事情が違います。ダーレスはWeird Talesの194411月号に発表した「闇に棲みつくもの」(The Dweller in Darkness)で三つ新たな設定を付加しましたが、ナイアルラトホテップは実は本命ではなかったのです。本命は彼の創造したクトゥグァ(Cthugha)であり、この作品の主たる目的はクトゥグァのデヴューにありました。それでも矢張りこの作品はナイアルラトホテップに新たに加わった設定の方が、結局、萌え・・・いえ、燃えているだけのクトゥグァよりも印象が強いのです。                                                              一つ目の設定として、ナイアルラトホテップはここで「フルート吹き」と呼ばれる二体の不定形生物を従えた奇怪な姿を披露しています。その姿がテーブルトークRPGのナイアルラトホテップに使用された事もあって、今日、「闇に這う者」に登場した蠢く不定形の黒い闇よりもポピュラーなデザインになってしまっています。このデザインは今日では「闇に棲むもの」と呼ばれていて化身の一つとして定着しています。おまけに主人公の知人に化けて騙すなど芸の細かいところを見せています。                                                          二つ目は、ナイアルラトホテップには地球上に拠点があると云うものです。そのうちの一つンカイの森がこの作品中に登場し、クトゥグァの為に滅ぼされています。                                        そして三つ目ですが、「闇に這う者」で光を嫌うとされたナイアルラトホテップには、火に弱いと云う弱点が追加されます。クトゥグァナイアルラトホテップを追い払えるのはクトゥグァが強いからではなく、ナイアルラトホテップの弱点が炎だからと云う訳です。エドワード・ポール・バーグランド(Edward Paul Berglund)は同人誌Eldritch Tales3号に発表した「Sword of the Seven Suns」の中で、ロバート・ワインバーグ(Robert Weinberg)の創造したヒーロー、モーガン・スミス(Morgan Smith)ナイアルラトホテップが、スミスの敵の魔術師が召喚したクトゥグァ配下の炎の生物(Fire Vampire)達に襲われ窮地に立たされる場面を描いています。又、ラムジイ・キャンベルが編んだアンソロジー「New Tales of the Cthulhu Mythos」にA・A・アッタナジオ(A A Attanasio)が寄せた「不知火」(The Star Pools)では、ナイアルラトホテップの名前と火に弱いと云う特徴がハイチの呪術関係者の間にも伝わっており、麻薬密売のギャング達はナイアルラトホテップに追われて街中を車で逃走中、眼についたガソリンスタンドを爆破して難を逃れています。

 

アッタナジオ「不知火」が収録されている「New Tales of the Cthulhu Mythos」ではもう一作ナイアルラトホテップがメインキャストを努める作品が収録されています。ディヴィッド・ドレイク(David Drake)「蠢く密林」(Than Curse the Darkness)で、ジャングルの奥地でアフトゥと呼ばれている黒い不定形のナイアルラトホテップが出現します。テーブルトークRPGでは、このアフトゥは化身の一つとされています。

 

ナイアルラトホテップの出演が多いのは、書き手にとっての使い易さもあるものと想われます。様々な姿(化身)を持つ為、矛盾した性質も持たせ易く、又、人間に変身して登場人物達との会話も可能、おまけに「這いよる混沌」と云う呼称が示す通り、混沌としたトリックスター的性質が備わっているので、目的不明の行動を取らせる事も可能なのです。そして様々な化身達は化身であるが故に同一時空に同時に存在可能です。普通であれば召喚されない限り化身同士が顔を合わせる事など無い筈なのですが、ナイアルラトホテップの場合、人間体の化身も存在しているので、化身同士の出会いも十分に有り得ます。前述の「Noir-Lathotep」は、人間のナイアルラトホテップだけで千人居る事になっており、誰かが死ねば人間体筆頭の化身の知るところとなる・・・と云う設定でした。「俺の千分の一が死んだ」と云う(タイトルに"ノワール"と入っているだけあって、人間体筆頭化身の一人称で展開していきます)様に。

なお、ナイアルラトホテップの人間体化身は、しばしばナイアルラトホテップの名をそのまま名乗っています。グレゴリイ・ニコル(Gregory Nicoll)「How Nyarlathotep Rocked Our World」ではバンドメンバーの前でエジプト人ナイアルラトホテップを名乗っています。

 

大抵の場合、混沌であるアザトース(Azathoth)の息子と言われており、アザトースの子供の神々のうちザサゴラ(Xathagorra)と共に「混沌」と呼ばれている神です。只、ドナルド・タイスン「ネクロノミコン」ではアザトースの腹違いの兄弟とされ、アザトースが「秩序」を内包した混沌であるのに対し、ナイアルラトホテップは「無秩序」を内包した混沌であるとされています。なお、クラーク・アシュトン・スミスに依ればナイアルラトホテップは妻としてイホウンデー(Yhoundeh)を娶っているとの事です。子供の数も多いようですが伝えられる名前としては、ナイアルラトホテップの子供達のうち最も恐ろしき神ヌラス=ゴル(N’rath-Gol)が居ます。ナイアルラトホテップの化身の中にも生殖能力を持つ者が居り、人間型の化身の一体である「黒い男」と人間の女性との間に生まれた息子としてリッキー・ペレス(Ricky Perez)が居ます。又、女神のミノガーラ(Mynoghra)ナイアルラトホテップの従姉妹と呼ばれています。

 

 

 

ナイアルラトホテップは人間に恩恵や力を与える事もあります。ランドール・ラースン(Randall Larson)「The Gunfight Against Nyarlathotep」では、ナイアルラトホテップの従者達の中でも人間の最高司祭でありツマン文書(T'sman Manuscript)の第四巻の執筆者であった人物が力を授けられ半神としてイスス・グーグリングー(Ythth Ghuggl'ingh) と呼ばれていたとしています。

 

未英訳ですが、上甲宣之の「脱出迷路」(全三巻)では、この世界は万物の王(アザトース)の夢であり王が目覚めれば世界は消滅してしまうので、ナイアルラトホテップはカダスで王の眠りを守っているのだとされていました。

 

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