Detailed Explanation (may be) of Gods of CTHULHU MYTHOS
ヨグ=ソトース、ヨグ=ソトホース、ヨグ=ソトホート、ヨグ=ソトト
1928年 初言及作品:アドルフォ・ド・カストロ/H・P・ラヴクラフト「最後の検査/最後の実験」
1929年 言及作品:ハワード・フィリップス・ラヴクラフト「ダニッチの怪/ダンウイッチの怪」
1945年 登場作品:H・P・ラヴクラフト/オーガスト・ダーレス「暗黒の儀式」
1959年 登場作品:チャールズ・D・ハマー(ロバート・シルヴァーバーグ)「クトゥルーの眷属」
1975年 言及作品:リチャード・L・ティアニー「The Winds of Zarr」
1976年 言及作品:リン・カーター「Zoth-Ommog」
1978年 言及作品:コリン・ウィルスン他「ネクロノミコン」
1989年 登場作品:ブライアン・ラムレイ「Elysia The Coming of Cthulhu」
1992年 言及作品:ジョン・ブラナー「Concerning the Forthcoming Inexpensive Paperback Translation of the Necronomicon of Abdul Alhazred」
1995年 言及作品:ドン・ダマッサ「The Dunwich Gate」
1997年 登場作品:リチャード・A・リュポフ「ダニッチの破滅」
1998年 登場作品:フランクリン・シーライト「Closing of the Gate」
別名
イオグ=ソトト
ヨク=ゾトス
ヤハウェ
呼称
外なる神(Outer God)
全てにして一つのもの(The All in One)
ヨグ=ソトースは時空を超越した存在で、その実体は次元の彼方にあり、人間はおろかクトゥルーにすら感知する事は不可能であると言う事ですが、出現の際、悪臭を放っており文字通り臭跡を残す為、辛うじて感知する事が出来ると云われています。又、或いはヨグ=ソトースは時空そのものであるのかも知れないとも云われています。又、ラヴクラフトは三次元空間を横切る際、虹色のの光球の集積体として人間の視覚器官に捕らわれる事があり、世界各地で目撃されるUFOの正体でもあるとしています。ラヴクラフトは、雪男やネッシー、漂着した奇妙な生き物の死骸、UFOなどの日本では「世界の七不思議」として知られた奇妙な事件の数々を巧みに取り入れており、「ダニッチの怪」では、さり気なくUFOの正体を作中で呈示しているのです。今日でもヨグ=ソトースのイメージの一つに、赤や青、黄色などの明滅する光球群と云うものがありますが、それはこの「ダニッチの怪」からです。この光球群についてコリン・ウィルスン(Colin Wilson)のネクロノミコン(Necronomicon)では、ヨグ=ソトースの特徴である色彩の変化する光球はヨグ=ソトースではなく、その一つ一つがヨグ=ソトースに付着している使い魔であると記されており、その数は十三であるとも記されており、その内容は次の通りです。
第一の球体ゴモリ(Gomory)は黄金の冠を戴いた駱駝の姿に変身、地獄の二十六の軍団を指揮し、魔力のある宝石及び護符に関する知識を持つ。
第二の球体ザガン(Zagan)は大きな雄牛か恐ろしき王に変身、地獄の三十三の軍団を従え、海の神秘に関する知識を持つ。
第三の球体シュトリ(Sytry)は大いなる君主に変身、六十の軍団を率い、未来の秘密に関する知識を持つ。
第四の球体エリゴル(Eligor)は鉄の冠を戴く赤い男に変身、六十の軍団を率い、未来の戦争の勝利の手段に関する知識を持つ。
第五の球体ドゥルソン(Durson)は鴉の如きものに変身、二十二の使い魔を従え、隠秘学の秘密に関する知識を持つ。
第六の球体ヴアル(Vual)は黒い雲に変身、古代の言葉に関する知識を持つ。
第七の球体スコル(Scor)は白蛇に変身、望む通りに金を出せる。
第八の球体アルゴル(Algor)は蠅の如きものに変身、およそ秘密とされるものなら何でも知っている。
第九の球体セフォン(Sefon)は緑色の顔の男に変身、財宝の隠し場所が判る。
第十の球体パルタス(Partas)は巨大な禿鷹に変身、薬草薬石の効能に関する知識を持ち召喚者の姿を見えなくさせる事が出来る。
第十一の球体ガモル(Gamor)は人間に変身、財宝の守護霊を退散させる知識を持つ。
第十二の球体ウムブラ(Umbra) は巨人に変身、召喚者の望むままに金と女の愛を自由に出来る。
第十三の球体アナボス(Anaboth)は黄色の蟾蜍に変身、召喚者を降霊術の達人にし召喚者を害する悪霊を駆逐する他、奇異なものや秘密に関する知識を持つ。
なお、ラヴクラフトは後に知人宛の書簡でヨグ=ソトースは我々の次元では気体、液体、固体、あらゆる姿を取る事が可能であるとしています。 一方、ダーレスは「暗黒の儀式」(The Lurker at the Threshold)の中で時空を裂いて出現した際、光球が割れると中から原形質が出現するが、触れた場合、命の保障は出来ないとしています。おそらく異質であり過ぎるのでしょうが、ここで超物理的かつ超生物的なスケールの存在として描かれていたヨグ=ソトースは、異質な存在ではあっても肉体に縛られた生物である事になってしまいました。
エルトダウン・シャーズ(Eltdown Shards)の生みの親であるリチャード・F・シーライト(Richard F Searight)の息子フランクリン・シーライト(Franklyn Searight)の「Closing of the Gate」ではダニッチで開いた時空から触手が出現し、又、そこから三つの赤い眼を持った存在が現れます。アーカムデイリーニュース(Arkham Daily News)のレポーターでありアブドゥル・アルハザード(Abdul Allhazred)の末裔であるアラン・ハスラッド(Alan Haslad)と共に居合わせた(ワトスン役の)フランクリン・シーライトは三つの赤い眼をまともに覗き込んでしまいますが、相手がフランクとアランを認識したのかどうかは定かではありません。いずれにせよ、ヨグ=ソトースとまともに眼を合わせた(?)人物など滅多に無く、作者ではあっても(?)貴重な体験と言えるでしょう。
ヨグ=ソトースの系統については大きく三つに分かれます。
まず、ラヴクラフトですがアザトース(Azathoth)が産んだ無名の霧(Nameless Mist)から産まれたとされています。そして、この系統ではヨグ=ソトースはシュブ=ニグラス(Shub-Niggurath)を妻とし恐るべき双子のナグ(Nug)とイェブ(Yeb)の父となっています。ここではナグはクトゥルー(Cthulhu)の父、イェブはツァトゥグァ(Tsathoggua)の父ですから、ヨグ=ソトースはクトゥルーとツァトゥグァの祖父でもあります。
一方、フレッド・L・ペルトン(Fred L Pelton)は全ての古きものはアザトースの従者であったソトース(Sothoth)に創られたとしているので、ヨグ=ソトースもクトゥルー達と同様、ソトースの手に依る被造物となります。
最後にリン・カーター(Lin Carter)がアンソロジー「The Disciple of Cthulhu」に発表した「Zoth-Ommog」中で記述した系統ですが、アザトースからクグサクスクルス(Cxaxukluth)、ヨグ=ソトース、シュブ=ニグラス、ナイアルラトホテップ(Nyarlathotep)の四神が生まれたとしています。ヨグ=ソトースとシュブ=ニグラスの間にナグとイェブが生まれたとするのはラヴクラフトと一緒ですが、母親不明のヨグ=ソトースの息子としてクトゥルー(Cthulhu)、ハスター(Hastur)、ヴルトゥーム(Vulthom)が居るものとしています。
この他にヨグ=ソトースは人間の女性との間に多くの子供が居ます。そもそもヨグ=ソトースの名を不動のものになった作品、ラヴクラフトがWeird Talesの1929年4月号に「ダニッチの怪」にしてからがヨグ=ソトースの恐怖と云うより、ヨグ=ソトースと人間の間に生まれた混血の兄弟が恐怖の対象となっているのです。「ダニッチの怪」自体が、この兄弟に依るヨグ=ソトースの召喚を阻止する話ではあっても。
「ダニッチの怪」に登場して以来、スター街道まっしぐらの存在ですが、この神の魅力については菊地秀行氏が氏の著作「YIG美凶神1」のあとがきで、「過去、現在、未来を体内に納め、あらゆる時空間に同時に存在するくせに、人間の女と交接して自分の子を孕ませてしまう」ヨグ=ソトホースの俗物ぶり」と書かれている点に尽きます。元々ラヴクラフトにとって「混血」と言う要素はホラーを含んだものであったらしく、それが効果的に結実したのが「ダニッチの怪」や「インスマスを覆う影」でした。この二作がいまだ人気であり、二作ともそれぞれ単独でクトゥルー神話のテーマの一つとして、サブジャンルの一つとして扱われる程のものであると言うのは、「混血の恐怖」を理解した上で魅力の虜になった人々が多い事を物語っています。それにしても性的な要素を嫌い通俗性を徹底して嫌ったラヴクラフトが「混血」の恐怖を描く為とは言え、人間と異界の者の交合と云うシーベリイ・クインも真っ青の実に通俗的な要素に訴えると言うのが面白いところです。壮大な設定を背景としながらも、性的な要素が見え隠れしている通俗性ないしはB級感覚こそが最大の魅力と云えるのではないでしょうか。ラヴクラフトは否定したがるかも知れませんが、そうした点で、矢張り彼は通俗の一典型であるパルプマガジンの申し子だったのです。なお、漫画家の水木しげる氏が貸本漫画家時代に「ダニッチの怪」を元にした作品を描いたと言う事は有名ですが、巨大で姿が見えない兄弟の存在は、後に「ゲゲゲの鬼太郎」で「朝鮮魔法」に登場する”魔法”の真相にも使用されました。
なお、ダニッチ(Dunwich)の発音はアメリカではダンウイッチが多いらしく菊地秀行氏は「ダニッチと発音したらダンウイッチに直された」旨コメントされていますが、イギリスの実在の地名にダニッチがあるので、英語ではダニッチ、米語ではダンウイッチとなるようです。但し、ラヴクラフトはこの様な場合、イギリス式を尊んでいたようですし、又、ラヴクラフトの居たニューイングランドはアメリカでもイギリスの発音が残る場所だったので、ダニッチと発音するのが妥当な様です。なお、イギリスのダニッチと区別してニューダニッチ(New Dunwich)と書かれる事もあります。
ダニッチから海へ一直線に下るとマサチューセッツ州のブラックベイと云う入り江の町へ出られます。ダニッチの魔女狩を逃れて来た者達の子孫が暮らしていると云われ、そこでは古きものヴーゾンファ(Vhuzompha)を崇める女達だけのカルトが存在している事がアンビュール夫妻(Tracy Ambuehl/James Ambuehl)の「Beast of Love」で語られています。又、エディ・C・バートン(Eddy C Bertin)に依ってクトゥルーの信徒達がイギリスのダニッチを脱出してアメリカを目指す「Dunwich Dreams,Dunwich Screams」が書かれています。
ヨグ=ソトースの眷属としてはウムル・アト=タウイル('Umr at-Tawil)を頭としたAnicient One達、それに従者のナラトゥース(Narrathoth)が居ます。
古き神々の一員にクトゥルーと同じ姿のクタニド(Kthanid)が居る様に、古き神でヨグ=ソトースと同種族と思しきヤド=サダグ(Yad-Thaddag)なる異星人がブライアン・ラムレイ(Brian Lumley)の「Elysia The Coming of Cthulhu」に登場しています。(タイタス・クロウ・サーガでは、姿形が異なる様々な異星人集団と云う設定です)
なお、テーブルトークRPGでもうけられた「外なる神」(Outer God)は、元はヨグ=ソトースの呼称でした。当然ながら、ヨグ=ソトースはRPGでは外なる神に分類されています。
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