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Azathoth

Detailed Explanation (may be) of Gods of CTHULHU MYTHOS

 

アザトース、アザトホース、アザトート、アザトホート 

 

1930年   言及文書:H・P・ラヴクラフト ”to Clark Ashton Smith, October 7”

1931年   言及作品:H・P・ラヴクラフト「ユゴスの黴」21及び22章

1931年   言及作品:H・P・ラヴクラフト「闇に囁くもの/闇にささやくもの」

1937年   言及作品:H・P・ラヴクラフト「戸口にあらわれたもの/戸口の怪物/戸をたたく怪物」

1939年   言及作品:ヘンリー・カットナー「ヒュドラ/ハイドラ」

1948年   言及作品:H・P・ラヴクラフト「未知なるカダスを夢に求めて/幻夢郷カダスを求めて」

1964年   登場作品:ラムジー・キャンベル「妖虫」

1972年   登場作品:ウォルター・C・デビルJr.「Homecoming」 

1973年   言及作品:エドワード・ピックマン・ダービィ(ディヴィッド・E・シュルツ)「Azathoth」

1976年   言及作品:リン・カーター「Zoth-Ommog」 

2004年   言及作品:ドナルド・タイスン「Necronomicon」 

2011年   言及作品:上甲宣之「脱出迷路 呪い最終日」

 

呼称                                                                               魔皇、又は魔王(Daemon SALTUN)  

 

古きもの達の王。全ての古きもの達の頂点に位置する盲目白痴の存在で、元から知性も感覚も無い存在だと云う説もあれば、いや知性と感覚を奪われたのだとする説もあります。冒涜的(?)かつ汚らわしい(?)無定形の存在で、原初の核の混沌とも云われています。 

 

アザトースの名は、ラヴクラフトが1930年の11月にクラーク・アシュトン・スミスに宛てた書簡の中で書き記しているそうですが、創元文庫のラヴクラフト全集6巻の大瀧啓裕氏の作品解題に依ると、ラヴクラフトが生前発表しようとせず、彼の死後に発見され1948年にThe Arkham Samplerの1号から4号の四回に渡って掲載された中篇「未知なるカダスを夢に求めて」(The DREAM-Quest of Unknown Kadath)脱稿したのが1927年の1月なので、その後の事になります。更にそれ以前にヴァテック風の長編を書こうとした時の作品のタイトルが、矢張りこの存在の名前でした。実際には序章に当たる部分を書き始めただけで挫折したこの作品が完成するか、せめて肝心のアザトースが出て来る迄、書き進められていれば、アザトースに関する設定もまた違ったものになっていたかも知れません。

作品としてアザトースが最初に描かれているのは、ラヴクラフトの長編詩「ユゴスの黴」(Fungi from Yuggoth)のうちWeird Talesの1931年1月号に掲載された21章「ナイアルラトホテップ」と22章「アザトース」で、後、矢張りWeird Talesの同年8月号に掲載されたSF中篇「闇に囁くもの」(The Whisperer in Darkness)にも名前だけですが登場しています。

又、「未知なるカダスを夢に求めて」では、姿こそ現さないもののノーデンス(Nodens)と対立する存在として描かれています。もっとも、実は、この作品の方が「クトゥルーの呼び声」(The Call of Cthulhu)の発表以前に書かれたもので、アザトースに限って云えば、ラヴクラフトが書こうとして挫折した長編「アザトース」の次に書かれたものなのです。そう云う意味では、ここに見られるアザトースは初期設定のアザトースと云って良いかも知れません。

  

アザトースの人気の一つに、ラヴクラフトが作中で行った遊びがあります。それはWeird Talesの1937年1月号に掲載されたラヴクラフト「戸口の怪物」(The Thing on the DoorStop)での事です。作中でエドワード・ピックマン・ダービイ(Edward Pickman Derby)が18歳の時に「アザトースその他の恐怖」(Azathoth and Other Horrors)なる詩集を出版していると云う設定で、後にラヴクラフト研究家のディヴィッド・E・シュルツ(David E Schultz)ダゴン秘密教団同人出版会(E.O.D Amatear Press Association) 内で、このエドワード・ピックマン・ダービイ名義で「アザトース」と言う詩を書くと云う遊びをやっています。この種の遊び心は神々を始めとした固有の名称の貸し借りなども含め、クトゥルー神話の書き手たちの特徴とも言える文学的な遊びですが、文学にたずさわる者たち全てがこういう遊びを好むと云う訳でもなく、この種の遊びを好んでSF界で行ったフィリップ・ホセ・ファーマーは、カート・ヴォネガットJr.から文学的寄生虫と蔑まされていたりしました。そして、第一期クトゥルー神話作家陣の中で最も文学肌の人物だったオーガスト・ダーレスは、ラヴクラフトのこの遊びを理解せず、文学的手法の一つとしてしか理解していなかった可能性があります。

アザトースは、想うにダンセイニ卿(Lord Dunsany)の影響下で考案されたものだったのではないでしょうか。この世界の自覚の無い造物主(盲目白痴である)であって、フルートの様な音色でなだめられていて、地球に出現したら最後、地球と人類は終焉を迎えてしまうのだと云う話は、ダンセイニ卿「ペガーナの神々」(Gods of Pegana)で、スカール(Skarl)の叩くドラムの音で眠っているマナ=ユウド=スウシャイ(MANA-YOOD-SUSHAI)を想わせます。ペガーナ神話では、造物主マナ=ユウド=スウシャイが戯れに創った神々が、造物主の眠っている間の戯れに創ったのが我々の世界であるとされているのです。

 

アザトースについて、フレッド・L・ペルトン(Fred L Pelton)サセックス草稿(Sussex Manuscript)では、古き神達の王であり、従者のソトース(Sothoth)が全ての古きもの達を創造したが、他の神々と古きものウルタール(Ulthar)が叛旗を翻しアザトースは知性と感覚を奪われ、ソトース古きもの達ともども封印され、ソトースに次ぐ副従者であったノーデンス(Nodens)が玉座に就いたと云う話が語られていますが、アザトースの出自について語っているものは多くはありません。ただ、リン・カーター(Lin Carter)がアンソロジー「Disciples of Cthulhu」の為に書いた「Zoth-Ommog」の中では、ウボ=サスラ(Ubbo-Sathra)と共に古き神達に創られた存在である事が判明しています。又、ドナルド・タイスン(Donald Tyson)「ネクロノミコン」の中でナイアラルトホテップとは異母兄弟であり、両者は共に混沌であるもののアザトースの中には秩序が、ナイアルラトホテップの中には無秩序があるとしています。

ラヴクラフトは、アザトースの子供としてナイアルラトホテップ(Nyarlathotep)、無名の霧(The Nameless Mist)、闇(The Darkness)を挙げています。一方、クラーク・アシュトン・スミスは、アザトースが分裂してツァトゥグァ(Tsathoggua)の父方の祖父にして祖母クグサクスクルス(Cxaxukluth)が誕生したとしています。又、スミスアザトースを複数の”性”を持つ存在であると考えていたようです。どうやら、スミスにとって複数の”性”は、高度な生命体の証でもあった様です。

リン・カーター「Zoth-Ommog」の中でアザトースの子供をクグサクスクルスナイアルラトホテップヨグ=ソトース(Yog-Sothoth)、シュブ=ニグラス(Shub-Niggurath)としていますが、後に幾人かの作家達が様々なアザトースの子供を加えています。ブライアン・ラムレイ(Brian Lumley)は三つのシリーズの完結編である「Elysia The Coming of Cthulhu」アザトースを大量の核エネルギーを持った生命体であるとし、アザティ(Azati)と呼ばれる子供達が居るとし、アザタ(Azatha)、アザテ(Azathe)、アザトゥ(Azathu)の三体のアザティの最期について語っています。又、ダゴン秘密教団の会員達が期せずしてリレー小説の形で展開する事になった「Huitziloxoptel」シリーズはアザトースの息子ウイチロソプテル(Huitziloxoptel)を扱っていますし、フレッド・C・アダムズ(Fred C Adams)が創造した混沌神ザサゴラ(Xathagorra)アザトースの息子です。又、アン・K・シュエーダー(Ann K Schwader)の創造した褐色の肌のセクシーな女性の姿をした生きているブラックホールのアムトセバ(Amtseba)や、ジョゼフ・S・パルヴァー(Joseph S Pulver)の創造したデーモンサイレン三姉妹(Daemon-Sirens)トゥーサ(Thusa)、オッココク(Okkokoku)、アウラニイス(Aulaniis)は、いずれもアザトースの娘達です。又、テーブルトークRPGでは、地球の神達を守っている異なる神達は、全てアザトースの落とし仔であるとしている様です。 

 

ラヴクラフトは、アザトースが常に飢えている存在としています。そしてDream-landsでノーデンスと対立している存在としており、スンガク(S'ngac)もあまりアザトースには好意的ではないようです。又、ラヴクラフトアザトースの住居を別次元としていた様ですが、テーブルトークRPGで付け加わった設定では、次元の彼方の宮殿でフルートのような音色を奏でる生物達がその演奏でアザトースをなだめており、他にもトルネンブラ(Tru'nembra)に依って宇宙の彼方から集められ不死性を与えられた様々な生物から成る演奏家たちが、アザトースの周囲で曲を奏でているとしています。ウィーンで不可解な失踪を遂げた老音楽家エーリッヒ・ツァン(Erich Zann)もその中に居ます。又、地球でも崇められるトゥールスチャ(Tulzscha)を始めとした踊り手たちが、アザトースの宮殿で踊っています。クラーク・アシュトン・スミスは不定形の不死身の存在と考えていたらしく、「アタマウスの証言」(The Testment of Athammaus)に登場するアザトースの曾孫であるツァトゥグァの曾孫か子孫に当たるクニガティン・ザウム(Knygathin Zhaum)の不死性と可塑性を祖先のアザトースの力が先祖返りで蘇ったものとしています。

 

一方、上甲宣之の「脱出迷路」ではアザトースは眠り続けている造物主で、世界はアザトースの夢でありアザトースが目覚めれば世界は崩壊する為、アザトースに近付くものが居ない様にナイアルラトホテップが守っているのだと、ヨグ=ソトースを介して近付いたヒロインに語っています。 

 

人間がアザトースを直視した場合、普通は発狂します。実例としてウォルター・C・デビルJr.(Walter C Debill Jr.)が同人誌Nyctalopsの6号に発表した「Homecoming」に於けるソーウォルド・ハラルドスン(Thorwald Haraldson)の失敗があります。実はナイアルラトホテップの仕掛けで脳だけとなって宇宙へ飛び出したハラルドスンは様々なものを見て巡りますが、最後に正面からアザトースを覗き込んでしまいます。地球に帰還し元の肉体に戻された彼は完全に狂っていて精神病院送りになってしまうのでした。

 

アザトースの信者としては、イギリスのゴーツウッド近くの森に居るシャッガイ星の昆虫種族及び彼等の暗示の影響を受けた魔女集団などが挙げられます。これはラムジィ・キャンベル(Ramsey Campbell)が18歳でArkham Houseから出した処女短編集「The Inhabitant of the Lake and Less Welcome Tenants」所収の「妖虫」(The Insects from Shaggai)で語られています。話の中でシャッガイ星の昆虫種族達は、アザトースの似姿の像を崇めており、多次元の門を通じてアザトースと接触も可能です。なお、似姿の像容は巨大な二枚貝の身体の下に何対ものしなやかな脚があり、開いた貝の中から先がポリプのような形状の節のある円筒形の器官が数本伸び、貝殻の奥の顔は口が無く深く窪んだ目に、ぬめぬめと光る黒髪に覆われている・・・とされています。宇宙広しと言えどもアザトースの姿をものの形に写し取った種族など他に居ないでしょう。しかし、テーブルトークRPGでは、この姿はアザトース自身では無いものとされ、キャンベルの創造した謎のザアダ=フグラ(Xada-Hgla)が実はアザトースの化身であって、その姿であると設定されています。

 

アザトースの最大の特徴は創造の力で、盲目白痴である為なのか創造はアザトースの意識とは無関係に行われています。ヘンリー・カットナー(Henly Kuttner)Weird Tales1939年4月号に発表した「ヒュドラ」(Hydra)に依るとアザトースの存在時空はヒュドラの存在時空と繋がっていますが、ヒュドラの犠牲となり魂だけの存在となった者もアザトースの思考範囲に入れば、自らの意思で自らを再構成出来ます。 

SFでは、宇宙のある地域で物質が生み出されていると云うアイデアが使われる事があります。元々天文学でホワイトホールから素粒子やエネルギーが放出されているとする考えがあり、”ペリー・ローダン”シリーズの「物質の泉」なども、この延長上のアイデアでしょう。ですが、そこから更に一つ進んだアイデアとして、具体的な物の形を完成された形で機能する状態で生み出すと云う考えがあります。一瞬で物質化して物が出現するアイデアは良くありそうに想えますが、永井豪のキューティーハニーの空中元素固定装置は元になる原子が必要であり、スタートレックのレプリケーターも粒子レベルから組み立てるため、粒子を創る為のエネルギーを必要とします。無から有を生み出せる訳ではありません。しかし、アザトースの創造力は無から有を生み出す能力です。何かを創造しようとする者にとっては、アザトース自体は「物質創世の場」として機能します。この「物質創世の場」は、スペースオペラの、そしてパルプヒーローものの典型的な小説キャプテン・フューチャーシリーズや、漫画の”美少女戦士セーラームーン”に登場するこの宇宙の何処かに存在する文字通り「無から有を生み出す力の場」の事です。キャプテン・フューチャーシリーズでは、太古の昔に「物質創世の場」に辿り着いた種族が「場」を制御して惑星を創り、そこに様々な物を惑星に至る迄、創り出せる装置を残していたと云う事になっており、創造する魅力に取り憑かれ装置を操ろうとするキャプテン・フューチャーを止められたのは学識の無い叩き上げの老警官エズラ・ガーニーであったとする事で、装置を扱うにはそれだけの技能が必要で科学的素養の無い者にはまるで無縁のものである事を、作者のエドモンド・ハミルトンは短編の中で描いてみせています。一方、武内直子が描く”美少女戦士セーラームーン”では銀河最強のセーラー戦士でありながら故郷を失ったセーラーギャラクシアが辺境惑星の酒場で、遠い宇宙に迄行って来たと称する探検家から「物質創世の場」の話を聞いて探索の果てに辿り着き、場を操る力を利用して創造した惑星に自分の帝国であるシャドウ・エンパイアを建設するのですが、エンパイアの構成員は元からギャラクシアに忠誠を誓っていた者の他は、ギャラクシアに一度殺された後、ギャラクシアの忠実な家来として新たに創り出された肉体に魂(作中ではクリスタルの形態をとっています)を入れ直されたセーラー戦士達であったり、中には新たにセーラー戦士として創り直された者も居ます。ギャラクシアの配下のセーラー・レッドクロウなどは、鴉の姿に変身してセーラーマーズに仕えているコロニス星人のフォボスとデイモスの昔の仲間で、共にセーラーコロニスに仕えていた事があったもののセーラー戦士としての力は無く、しかしセーラーコロニスを殺したギャラクシアが、セーラーコロニスの力を加えてレッドクロウをセーラー戦士として創り直した事になっています。

アザトースの創造の力の発現としては”キャプテン・フューチャー”に出て来る「物質創造の場」の具現化よりも、”美少女戦士セーラームーン”の方が近いものがあります。「ヒュドラ」の主人公はそこ迄、想い至っていませんでしたが、自らを再創造するだけでなく超人的な肉体を手に入れる事も可能性としては有り得たのです。その点でアザトースは魔皇であるだけでなく創造神でもあるのです。もっとも、アザトースの思考範囲に入ると云う事はアザトースの姿を隠している「帳」の中へ入る事でもあり、誤ってアザトースの姿を見てしまう危険があります。事実、「ヒュドラ」の主人公は、そうして破滅しています。  

 

 

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