Detailed Explanation (may be) of Gods of CTHULHU MYTHOS
ラーン=テゴス、ラン=テゴス
1934年 初登場作品:ヘイゼル・ヒールド/H・P・ラヴクラフト「博物館の恐怖」
1945年 言及作品:H・P・ラヴクラフト/オーガスト・ダーレス「暗黒の儀式」
1975年 言及作品:リン・カーター「The Scroll of Morloc」
1988年 登場作品:ローレンス・J・コーンフォード「Return of Rhan-Tegoth」
ラヴクラフトがヘイズル・ヒールド(Hazel Heald)と言う女性の依頼で代筆しWeird Talesの1933年7月号に掲載された「博物館の恐怖」(The Horror in the Museum)に登場した存在で、北方の人類先行種族の遺跡の中で象牙の玉座に座り仮死状態だったところを発見され、箱詰めにされてアメリカへ運ばれて来ました。生き物の血がエネルギー源です。人間より大きく丸い体に丸い頭部、三つの魚の眼と先端が鋏状になった脚を持ち、全身から生える体毛を想わせる触手は先端が吸血用の器官となっており、又、鰓を備えている為、基本は水棲生物と想われます。
登場作品では狂人が犬を生贄に捧げていたが後に人間をも捧げようと目論見、失敗して自らが生贄となってしまうと云うオチでした。
又、件の狂人は、この神が死ぬと古き者達の復活は有り得ないと叫んでいますが、にわか信者となった狂人の戯言であり、この存在自身が、ほかの神々にとって特に重要な存在である訳ではないのでしょう。
なお、大瀧啓祐氏は「ラヴクラフト全集 別館(下)」の解説で本作を神話作品のパロディと呼んでいますが、その点についてはラヴクラフト自身、ウケを狙ったものかも知れません。と云うのは、大瀧氏は、代作が割に合わないとこぼしていたラヴクラフトが、ヘイズル・ヒールドの作品に限っては五編も書き、他の作品よりも売り込みにも熱心だった(らしい)事からヒールドの料金が高めだったか原稿料に応じたものであった可能性を指摘していますが、だとしたら、売れる様にラヴクラフトなりに工夫した可能性もあります。ヒールド名義の作品はラヴクラフト作品の中でもテンポが良く娯楽作品としての出来も良いのですが、ラヴクラフトが自作で目指したものとは少し違う気がします。ラヴクラフトにとって本作は、作品ではなく商品だったのではないでしょうか。
ところで、オーガスト・ダーレス(Augast Derleth)はラヴクラフトのメモを元に魔術師ミスクァマカス(Misquamacus)の復活を描いた中篇「暗黒の儀式」(The Lurker at the Thteshold)で、何故かラーン=テゴスは長毛に覆われたグノフ=ケー(Gnoph-Keh)でもあるとし、以後、亜人間であるグノフケー族(Gnophkehs)の神はラーン=テゴスの化身であるとされる様になっています。
リン・カーター(Lin Carter)はFantasticの1975年10月号に発表した「The Scroll of Morloc」の中で、ヴーアミ族(Vormis)のイーモグ(Yhemog)に宇宙的かつ不浄的なラーン=テゴスの化身がグノフケー族の神であると語らせており、ツァトゥグァ(Tsathoggua)を神とするヴーアミ族がグノフケー族の神であるラーン=テゴスをグノフケー族ともども快く想っていない事を明かしています。但し、ここで語られるラーン=テゴスはラーン=テゴスそのものではなく、あくまでその化身と云われる神、グノフ=ケーについてです。
ラーン=テゴスそのものを扱ったりラーン=テゴス自体が登場する話は中々見つかりません。ローレンス・J・コーンフォード(Laurence J Cornford)が1988年にネット上で発表し、後、同人誌Cthulhu Codex14号に掲載された「Return of Rhan-Tegoth」は「博物館の恐怖」の後日談的な作品ですが、結局、やっている事は「博物館の恐怖」と一緒だったりします。或いは正体がはっきり掴めず、書き手にとっては扱い辛い神なのかも知れません。
なお、カーターは「The Scroll of Morloc」の中でラーン=テゴスを風の精に分類しています。鰓がはっきりあるので、明らかに水棲もしくは両棲の生物なのですが。
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