Detailed Explanation (may be) of Gods of CTHULHU MYTHOS
クラネス、クレネス
1925年 初登場作品:ハワード・フィリップス・ラヴクラフト「セレファイス/光の都セレファイス/夢の都市セレファイス」
1948年 登場作品:ハワード・フィリップス・ラヴクラフト「未知なるカダスを夢に求めて/幻夢郷カダスを求めて」
1986年 登場作品:ブライアン・ラムレイ「Hero of Dreams」
1986年 登場作品:ブライアン・ラムレイ「Ship of Dreams」
1987年 登場作品:ブライアン・ラムレイ「Mad Moon of Dreams」
クラネスはラヴクラフトが同人誌The Rainbowの1922年5月号に発表したダンセイニ風ファンタジー「セレファイス」(Celephais)の主人公で、この名はDream-landsにおける夢の世界での名前です。うつし世での名前は不明です。そしてこの人物は設定を見るに、明らかに作者であるラヴクラフトの分身的存在です。
うつし世では不遇を極めた人物で、空想の世界に逃避しその豊かな想像力で夢の世界でオオス=ナルガイの谷と都を創造します。夢の世界へ出入りする為、麻薬にも頼り、最後に肉体の方はイギリスのインスマス(アメリカの方のインスマスではなくて)で死亡、目覚める事なく永遠に夢の世界に留まれる事となり、王となり永遠に幸福でいられる様になります。こうして見ると神と云うよりキャラクターの一人で、現にテーブルトークRPGではNPCの一人です。けれども彼は神なのです。「セレファイス」に「まことクラネスこそ、夢のなかでオオス=ナルガイ創造した者であり、それゆえに、いまや永久(とこしえ)にオオス=ナルガイの主神となるべく定められた(大瀧啓裕訳)」とあるからです。彼は神であり王なのです。
オオス=ナルガイの王となったばかりか、クラネスは空に浮かぶ「大理石のごとき雲の都市」(大瀧啓裕訳)セラニアンの王ともなり、セラニアンとセレファイスで交互に王として執務を続ける事になります。
ブライアン・ラムレイ(Brian Lumley)の書き下ろし長編「Hero of Dreams」では盗賊のディヴィッド・ヒーロー(David Hero)と放浪者エルディン(Eldin the Wanderer)の人物を見抜き自らの直属エージェントとしました。又、Dream-landsの防衛の為、飛行戦艦を建造し古きものムノムクァ(Mnomquah)に仕えるムーンビースト(Moon Beast)達の艦隊を迎え撃っていますが、イレク=ヴァドの王ランドルフ・カーターがムノムクァを迎撃に成功した後、艦隊は解散させています。
ラヴクラフトのDream-landsは一種の異次元世界ですが、肉体を伴わず眠りの中で精神だけが行く事が出来る世界であるのが特徴的です。それ故、夢の世界なのです。 夢の世界ものを最初に手がけたのが誰なのかはよく判りませんが、日本でもよく知られている夢の世界ものと云うと、C・S・ルイスのナルニアがあります。ナルニア・シリーズでは、子供達はナルニアで冒険をし歳月が過ぎても、こちらの時間で朝になれば眼を覚まし、ナルニアからは半ば強制的に帰還させられてしまうのです。そして大人に成長して行くと共に夢の世界での事を忘れ、ナルニアはいつしか子供の頃に見た夢、或いはお遊び程度の記憶になってしまい、こうなると二度とナルニアへは入れなくなってしまうのです。子供の頃の純真な記憶を保ち続けている者だけが大人になっても行く事が出来、最後、鉄道事故でみな一斉に死んでしまい永遠にナルニアに留まれる事になると云うハッピーエンドを迎えるのですが、この辺り、ラヴクラフトのDream-landsとナルニアは共通しています。或いは、英米に、眠りの中で魂だけが行く事が出来る楽園思想の様なものがあったのかも知れませんし、誰か先人の作品にラヴクラフトやルイスが影響を受けていた可能性も充分にありますが、よく判りません。いずれにせよラヴクラフトのDream-landsへ出入り出来る者は死んでおめでとう!と云った感じが強いのですが、うつし世で、後に残された者達にとっては不幸な事でしょう。
関連項目
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