Atlach-Nacha

Detailed Explanation (may be) of Gods of CTHULHU MYTHOS

 

 

アトラク=ナクァ、アトラク=ナカ、アトラク=ナチャ

 

1934年   初登場作品:クラーク・アシュトン・スミス「七つの呪い」

1945年     言及作品:H・P・ラヴクラフト/オーガスト・ダーレス「暗黒の儀式」

1976年     言及作品:リン・カーター「Zoth-Ommog」

1981年     言及作品:リン・カーター「The Descent into the Abyss」

1984年     言及作品:ロドルフォ・A・フェラレシ「The Mistress of Atlach-Nacha」

1989年     登場作品:ブライアン・ラムレイ「Elysia:The Coming of Cthulhu」

1997年     言及作品:ジェームズ・アンビュール「Atlachnaphobia」

2006年     言及作品:リチャード・L・ティアニー「To Atlach-Nacha」

 

呼称  

蜘蛛の女神(Spider-Goddess)

網の女神(Web-Goddess)

網の女主人(Mistress of Web) 

漆黒胴に包まれし蜘蛛神(the ebon-bodied Spider-God)

有識なる運命の王(sapient Lord of Fate)

蜘蛛王(Spider-King)

蜘蛛の領主(Spider-Lord)

 

クラーク・アシュトン・スミス(Clark Ashton Smith)がWeird Talesの1934年10月号に発表した「七つの呪い」(The Seven Geases)に登場した存在で、三番目の呪いの主で礼儀正しい神様です。ここでは地底の大きな亀裂に橋を架ける作業をしており、少しの間、仕事を休む事すら考えない真面目な性格をしています。今風に云うならワーカホリックな神様と云ったところでしょうか。お蔭でツァトゥグァ(Tsathoggua)から二番目の呪いを受けて自ら生贄として赴いたラリバール・ウーズ/ラリバール・ヴーズ卿(Lord Ralibar Vooz)を、味見する事なく呪いを掛け直してハオン=ドル(Haon-Dor)の所へ行かせます。

スミスの描写ではアトラク=ナクァはうずくまった人くらいの大きさの存在とされていますが、化石で一番大きな蜘蛛(蛛形類ではあるが蜘蛛そのものではないとも云われていますが)は全長60センチくらいと云う事ですので、それよりやや大きいくらいでしょうか。

後、オーガスト・ダーレス(August Derleth)は自ら経営主催するアーカムハウスから出版した「暗黒の儀式」(The Lurker at the Threshold)の中でアトラク=ナクァの名をGreat Old Oneの中に混ぜています。

又、リン・カーター(Lin Carter)はアンソロジー”Disciples of Cthulhu”に寄せた「Zoth-Ommog」の中で、アトラク=ナクァに仕えるLesser Old Oneとしてチトカア(The'tkaa)率いる灰色の織部(The Gray Weavers)について語り、後、彼らを自ら編集するペーパーバックのWeird Tales2号にクラーク・アシュトン・スミス名義で自らは補作の形で発表した「The Descent into the Abyss」に登場させていますが、この作品はスミス「七つの呪い」を底本としたリメイクに過ぎずスミスの筆はまるで入っていないので、カーターの死後、彼の作品の著作権管理者となったロバート・M・プライス(Robert M Price)教授に依り、現在はリン・カーターの単独名義作品となっています。

クトゥルー神話の神々には性別不明の存在が少なくありませんが、アトラク=ナクァもその一体です。スミスは性別について何も語っていません。蜘蛛ならば女性存在の様な気もするのですが、ロドルフォ・A・フェラレシ(Rodolfo A Ferraresi)がイギリスの同人誌Etchings & Odysseys5号に発表した「The Mistress of Atlach-Nacha」では、アトラク=ナクァは人間の女性を愛人として宇宙的性交(Cosmic Sex)を行っていたらしいので、そうすると男性でしょう。しかしジェームズ・アンビュール(James Ambuehl)が同人誌Cthulhu Cults9号及び今は亡きネットマガジンMythos Onlineの6号に発表した「Atlachnaphobia」では、はっきり女神とされています。蜘蛛を病的に恐れる男が、アトラク=ナクァの名が囁かれる夢に苦しめられ精神科医のレイモンド・スラスク(Raymond Thulask)を訪ねたところ、蜘蛛の女神アトラク=ナクァに選ばれて印を付けられたのだと説明されます。只、この精神科医自身が中々に怪しい人物で言葉から類推するに診療所の書棚に「無名祭祀書」を置いていたりする様で、アトラク=ナクァについて書かれた「The Widow's Kiss」と云う本も置いていたりしますし、果ては儀式を執り行ってアトラク=ナクァに意思を伝えたりもしている人物です。精神科医の儀式に依って男が蜘蛛を苦手とする事を知った女神は男が一生、蜘蛛を見ない様にしてやりますが、これは、蜘蛛がそこに居ても男に見えないだけの話で、決して男にとり望ましい結果ではありませんでした。なお、この「存在すれど見えない」と云うのは、視界に入っていながら脳が認識を避けているものと解釈出来、京極夏彦の「姑獲鳥の夏」や元長柾木の「全死大戦」等に見られるものと同等のものでしょう。かつてイギリスの子供向けドラマ「魔法使いキャットウイールズ」でも中世から現代に来てしまった魔法使いが少年と仲良くなり、その少年の周辺の大人達には自分の姿が見えない様に催眠術をかける設定があります。この時、少年の家の愚鈍な使用人だけは術にかからず見えてしまうのですが、他の大人達は魔法使いの姿を認識出来ないので、怪しい男が居ると云っても信用して貰えないと云うのが毎回のお約束でした。そこで、この「Atlachnaphobia」の合理的な解釈としては、男の夢は只の悪夢で、精神科医は本当はアトラク=ナクァに意思など伝えておらず、催眠術で蜘蛛の姿を認識出来なくしただけの事かも知れません。蜘蛛なんて本当は可愛いものなんですがねえ。特にハエトリグモ(Jumping Spider)とか大土蜘蛛(Tarantula)なんて丸っこくて毛がもこもこふさふさしていて、ぬいぐるみみみたいで愛嬌があるんですけどねえ。

結局、雌雄の区別がはっきりしない神様ですが、もしかしてその時々で性別を変えられるのかも知れません。いずれにせよ、人間から見て割とつき合い易い神様の様です。

 

関連項目

ハオン=ドル(Haon-Dor)

サレン=サタ(Saren-Satha)

 

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