Detailed Explanation (may be) of Gods of CTHULHU MYTHOS
エーリッヒ・ツァン、エーリヒ・ツァン
1922年 初登場作品:ハワード・フィリップス・ラヴクラフト「エーリッヒ・ツァンの音楽」
1943年 言及作品:ドゥエイン・W・ライメル「Music of the Stars」
1976年 言及作品:ジェームズ・ウエイド「The Silence of Elika Zann」
1987年 関連作品:スティーブン・マーク・レイニー「Therenody」
1988年 関連作品:スティーブン・マーク・レイニー「The Spheres Beyond Sound」
ラヴクラフトの最高傑作の一つで、同人誌The National Amateurの1922年3月号に発表された「エーリッヒ・ツァンの音楽」(The Music of Erich Zann)に登場するドイツ人の老ヴィオル弾きです。天才的なヴィオル弾きですが、彼の演奏に呼応するかの様に奇怪な音楽が何処からか聞こえて来る様になり、幾度かその様な事が繰り返された後、ツァン老人は消失してしまうと云う本作は、何が起きていたのか一切説明の無い不条理なホラーです。ダーレスはこの作品をクトゥルー神話に数えていませんでした。
「エーリッヒ・ツァンの音楽」を最初にクトゥルー神話に取り込んだのはドゥエイン・W・ライメルでした。この人物は他の書き手達が自身の世界の中に他人の創造したものを半ば遊びで取り込んでいるのに対し、ラヴクラフト自身の許可を得てラヴクラフトの世界で創作をすると云う、今日で云えば作者公認の二次創作的な活動をしていた人で、1943年の春に彼は自身が発行している同人誌Acolyteに「エーリッヒ・ツァンの音楽」の続編的なクトゥルー神話作品「Music of the Stars」を発表、見えない何物かを召喚する音楽の存在を明らかにしました。
続いてツァン老人の孫娘をヒロインに据えた「エーリッヒ・ツァンの音楽」の続編「The Silence of Erika Zann」をジェームズ・ウエイドが、アンソロジー「The Disciples of Cthulhu」に発表しましたが、ここでは確かに奇怪な音楽も登場するもののナイアルラトホテップが関わっている事を匂わせるだけで、音楽そのものの怪異を描くものではありませんでした。
一方、何物かを召喚する音楽の存在については、エーリッヒ・ツァンにインスパイアされてモーリス・ツァンと云う音楽家を創造したスティーブン・マーク・レイニーに受け継がれます。レイニー自身はライメルの「Music of the Stars」の存在を知らなかったと想われますが、着眼点は一緒で、それを過去の人物の日記やモーリス・ツァンの書き記した「The Spheres Beyond Sound」を読み進む事で物語が進行すると云う正にラヴクラフト的な展開の作品「Therenody」「The Spheres Beyond Sound」を発表して行きました。
その一方でテーブルトークRPGでは「音楽の天使」の別名を持つ外なる神のトルネンブラ(Tru'nembra)を創造、エーリッヒ・ツァンはその肉体もろともトルネンブラにお持ち帰りされた事になっています。ツァン老人はアザトース(Azathoth)の宮廷でアザトースの為にヴィオルを奏で続けている筈です。 近年ではテーブルトークRPGで創造された設定が小説に導入される様にもなって来ていますので、そろそろトネルンブラの存在を踏まえた上でのエーリッヒ・ツァンの続編が書かれてもおかしくないでしょう。
関連項目
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